平成17年12月10日 福智寿彦
1:日本の状況(厚生労働省から)
・精神障害者 平成11年204万人
・入院 5年以上10年未満 14.1%、10年以上 28.9%、 合わせて5割弱が5年以上の長期入院
・最近の入院は3ヶ月で半分が退院。1年で85%の方が退院。1年から5年の入院期間の人は10.9%。5年以上入院していた人は5.7%。
・それらのうち退院後 1年未満の入院期間の方は65.7%家庭に帰る。5.4%が社会復帰施設へ。1年から5年になると家庭へ帰る人減り5.1%となり転院あるいは社会復帰施設へ。5年以上では1.2%の人が家庭へ、それ以外の3.5%は転院もいくは社会復帰施設へ。
・社会復帰施設(地域生活支援センター、通所授産施設、グループホーム、福祉ホーム、生活訓練施設、援護寮)の利用者の多くは40歳未満。しかし、グループホームや福祉ホームは40歳以上65歳未満が多い。新規利用者は、生活訓練施設は精神病院からが7割、福祉ホームは6割が精神病院から、グループホームは精神病院が5割、その他の社会復帰施設からが2割。通所授産施設は在宅からが5割、精神病院からは2割。地域生活支援センターは、在宅からの利用者が半数以上、病院から1割、その他の施設からが1割。 ・施設からの退所者は、生活訓練施設から就労が7%、家庭復帰が半分弱、再入院が4人に一人。福祉ホームからは就労3.9%、家庭復帰とその他の社会復帰施設と再入院が3分の1づつ。通所授産施設では2割が就労。家庭復帰が3割。
・平成11年 33万人入院。内、7万1600人は受け入れの条件が整えば退院可能。7万2千人の内訳、入院1年未満が2万人、1年から5年は2万人、5年以上10年未満が1万人、10年以上が2万人。5年以上の人は在宅へ帰ることがむつかしい。年齢構成は45歳から70歳が大半。つまり日常生活面での自立(移動動作、食事、排泄後の始末等)度が低い人が多い。
平成11年日本精神神経学会が全国の143の精神病院の1年以上入院中の患者19342人の調査で、生活支援が整えば退院可能は32%(6210人)。65歳未満4949人、65歳以上1261人。退院可能者に必要なサービスとして、通所型のサービスとしてデイケア、ナイトケアが41%。作業所12%。居住サービスとして、生活訓練施設が32.6%、福祉ホームが16.9%。グループホームが15.3%。食事サービスが必要な人は45,8%。これらを元に計算すると、退院可能な方は7万4千人となり厚生省のデータと似ている。
・対象者の退院支援策としては、老人性痴呆の方が8千人で在宅支援か老人福祉施設との連携。痴呆性疾患患者を除いた精神疾患の方を55歳を境に分けた。若年者で短期(入院期間5年未満:1万8千人)の方は在宅支援を主。家族の受け入れが不十分であればグループホーム等。長期(入院期間5年以上:1万1千人)の方の場合は、一定以上の生活能力を備えているということで生活訓練施設を通してグループホームあるいは在宅へ。高齢者は在宅支援のほか福祉ホームで。ADL介護が必要な方は、在宅生活支援のほかに老人福祉施設との連携が必要となってくる。
・施設の利用率は、通所授産施設は100%に近いが、生活訓練施設や福祉ホームは7割程度。相部屋が拒否される傾向。
地域生活支援センターの活動、1つは相談事業。これ以外にもレクリエーション・服薬指導・就労相談・入浴・公共機関の利用指導など。よく利用されるサービスとしては「相談」が男女とも多く、その次に多いのが「憩いの場」としてあるいは「レクリエーションへの参加」であり精神障害者を地域で支える施設として利用されている。
・2002年の4月からホームヘルパーを居宅生活支援事業という形で市町村業務として行ったが、ホームヘルパーを在宅などへ派遣あるいはショートステイ・グループホーム等を市町村業務として行うことで、在宅への支えとしては訪問診療・訪問看護なども非常に大きな役割を担ってくるだろうということで考えているし、色々な相談事としては地域生活支援センターの役割も大きくなってくる。
・ただ依然として病床数が多く長期入院患者が減らない、社会復帰や地域生活支援のための施設が不十分、精神疾患に対する国民の理解が不十分、ということで心のバリアフリー化が一番困難。
2:今後の具体的案(厚生労働省案)
精神障害者の地域生活を支援;
@在宅サービス:ホームヘルパー派遣事業、グループホームもしくはショートステイ等の居宅生活支援事業の充実。
A地域における住居の確保:2002年の審議会から患者さん本人に入ってもらった。家族会は、家族が受け入れるというふうに世間はそう思っているようですが、実はそうではなく精神障害者のような場合には、家族との関係が極めて悪く、家族はなかなか受け入れないというところが現実に多い。そういうなかで住まいの確保が大事だということで、グループホームの確保とか公的住宅への単身での入居あるいは民間の賃貸住宅への入居という形になる。関係部局は、国土交通省のところに精神障害者が単身でも入れるような、あるいは公的住宅へのグループホームの確保の要請。民間住宅の保証人が得られない問題も研究中。川崎市が市単独で保証人付で動き出しているのでそういったものを参考にしながら今後を考えていきたい。
B地域医療の確保・精神医療における地域医療の考え方:全国で360の2次医療圏があるがその中で精神医療病床のないところは42医療圏。あるいは診療所すらない外来すらないところが20箇所。精神科と一般の病院の連携が大切。多い精神病床数は算定規準病床を見直す。
その他には、ピアサポートという支援をどうするか来年度要求する。患者さんだけでなく、家族会が家族の相談にのる仕組みを作っていく必要がある。
・就労支援は2002年4月の通常国会で障害者雇用について法律の一部改正があり2006年4月から導入。次に、社会復帰施設等の施設が足りないので充実させていく。
・その他には人権の確保。精神科医師の数の確保と質の向上。臨床心理士に関しては資格化の話が以前からあるが、議員立法ということでできないか検討されているが難しい状況。
これまでは統合失調症を中心とする精神障害であったが、これから先はそれだけでなく、学校教育の段階からの心の健康の問題、あるいは正しい理解を得るための教育。2番目が自殺の予防とうつ対策。PTSD対策、睡眠障害、思春期などの相談体制を整える。
精神科診療所は数が増えている。4000近くある。
3:病床数が多く、平均在院日数が長いこと
欧米では精神科病棟は人口1万人に対して10床台あるいはそれ以下であるのに対して、わが国は約28床という高い数字である。これは昭和30〜40年代の精神病院新築ラッシュで急激な増床があった結果である。
また、平均在院日数も外国との比較では際立って長く、最近になってやっと400日を切り、1年に近付いたという状態である。これらの問題については長年にわたって、欧米諸国からの批判の対象となってきた。
長期在院患者の問題と平行して、入院患者の高齢化の問題も深刻になっている。2002年(平成14年)では65歳以上の高齢者は12万人以上で、全入院患者に占める割合は37.3%と3人に1人以上が高齢者である。そのために退院がますます困難となっている。
4:精神医療費が廉価であること
精神科医療費は医療費全体のおよそ5%台である。冒頭に述べたように診療報酬はほかの一般科よりは低く抑えられている。それは入院管理料に表れており、一般科の患者の約半分である。このような低い診療報酬は、患者に対するサービスの低下につながっている。その根底にある考え方は、精神科医療は人手がかからないものであるという誤った考え方であり、精神科特例の考え方と軸を一にしている。
これからの精神医療・福祉はいかにあるべきか
これまで述べてきた現状をみても自明のことであるが、今、わが国の精神医療・福祉の領域では、重要課題が山積している。その中で主要な課題を以下に列挙する。
2002年(平成14年)に出された厚生労働省の社会保障審議会の報告書「我が国の精神保健医療福祉の今後のあり方について」の中で、7万2,000人の社会的入院の解消と、それに伴う病床数の減少を見込むことが明記されている。1999年(平成11年)の厚生労働省の調査では、「受け入れ条件が整えば退院可能」な入院患者、つまりいわゆる社会的入院患者が7万2000人いるとされた。その数字をより明確にし、効果的な計画を立てるために、改めてきめ細かいニーズ調査を行う必要がある。そして社会的入院を解消するための計画を各自治体、市町村が策定する。生活訓練施設を経て、自宅やグループホームへ移る者、ケア必要度の高い場合は福祉ホームへの退院、あるいは介護施設に移る者など、患者ニーズにあったいくつかの退院ルートがあるであろう。福祉サービス提供の方法は、高齢者の介護支援で使用される手法であるケアマネジメントによるものとして、その上に、さらに諸外国で成果をあげているACT(Assertive Community Treatment)を行う。ACTの特徴は、多職種チームによるアウトリサーチ型(訪問型、出前型などともいわれる)の支援サービスである。
地域生活支援のためには、住居の確保が欠かせない。公営住宅の優先入居やグループホームとしての活用などについても検討を進める必要がある。自立のためには就労が課題となるが、それを進める上で、精神障害者を雇用義務制度の対象とすることが最重要課題であろう。厚生労働省は最近それへ向けての大きな一歩を踏み出した。
社会復帰施設として、生活訓練施設、福祉ホーム、通所授産施設、入所授産施設、福祉工場、地域生活支援センター、小規模作業所などがあるが、これらを利用者のニーズに応じて整備することも課題である。この課題は社会的入院の解消のためには必須のものである。
ご両親が健在のうちにどうしておけば良いのでしょうか?
@に単身生活の練習
Aに就労を含めた社会参加練習
ご両親が健在のうちに親元から離れ、社会に参加する練習をしておくべきだと思います。私は、名古屋市で精神科クリニックを運営しています。クリニックには大規模デイケア施設、グループホームがあり、閉じこもって生活していた方が料理プログラムや社会機能訓練プログラムに参加したり、親元を離れて6人での共同生活を始めたりしています。また、2005年10月からは20人が生活できる援護寮と24時間対応できる生活支援センターを始めました。デイケアにはてんかん発作のコントロールのために通所されている方もいます。
就労という社会参加からみますと、わが国の18歳以上の身体障害者は325万人です。そのうち常用雇用されている方は39万人です。知的障害者は45万人でそのうち常用雇用されている方は6万人です。精神障害者では258万人中5万人です。それぞれ障害を持ちながらもその人の能力に合った仕事に就き、生きがいを感じながら生活をすることは大切なことではないでしょうか。障害のある人も社会に参加したい仕事に就きたいと思っているのであれば、障害のない人と同じように機会は与えられ本人もそのために障害のない人と同じように挑戦するべきだと思います。
実際に、生活支援センター、精神障害者生活訓練施設(援護寮)を運営し始めて思ったこと
■生活支援センター
・デイケアの代わりのプログラムのない居場所として自閉傾向の強い患者さんが集まってしまう。
・職員と登録者の距離感がとりにくい、近づきすぎてしまう。
・職員の社会親和性が悪い。企業や他の社会団体へのアプローチが苦手。
■援護寮
・入所希望者がデイケアから少ない。本人も親も離れられない。
・家族が本人の一人暮らしのストレスを過大に心配。
・病院からの紹介は少ない。
・職員が退寮後のプランを描けない。
■クリニック職員
・医師の問題。
・心理職、看護職には生活支援、就労支援への仕事に対する抵抗感。
精神障害者の社会復帰に向けて必要なもの
@単身生活できる能力
A社会参加できる場所
B楽しみ
楽しくなければ一人暮らしもしないし、仕事もしない
楽しいから何とか生きていこうとがんばれる
