てんかんと就労 体験談
てんかん仲間を支えたい
−てんかん患者の私が看護師としてできること−

福智クリニック 芝高団美

 私は波5月号の「てんかんと就労」のコーナーのAに掲載された福智先生のクリニックで仕事をしています。働き始めたのは昨年の11月からで、まだ10ヶ月しか経っていませんが楽しく働かせていただいています。

◆1.自立を目指す“福智クリニック”

 福智クリニックは、デイ・ナイトケアの“すずかけの郷”、障害者就労支援会社“有限会社ベリタス”、24時間相談業務をしている“メンタルヘルスサポートセンター”、一人暮らしの練習ができる“無心寮”、グループホームの“澄心荘”、スタッフのサポートを受けながら一般就労の厳しさを勉強できるケーキ屋さんの“寸心”を併せ持つ、てんかん専門医を院長とした、他にはあまり見られない外来診療のみの精神科です。てんかん患者に対しては発作のコントロールだけを目的とするのではなく、近い将来に面倒をみてくれる人がいなくなったときのために、経済的にも精神的にも自立した生活が送れるようにすることを目指すクリニックです。

◆2.てんかん仲間を支える看護師になりたい

 中学一年の時にてんかんで入院してから、お世話になった看護師に憧れを抱き、「同じてんかん仲間をサポートしたい」と思い、周りの人たちに反対されても看護師を目指しました。実際は希望の勤務先は見つからず、福智クリニックと出会うまでに整形外科、美容外科、手術室、緩和ケア病棟などの転職を繰り返しました。どの職場でも仕事は充実していましたが「自分のやりたいことにしっくりこない」というのが正直な気持ちでした。波の会に入会してから講演会などに参加していくうちに福智先生のご活躍を知り、「働かせてもらいたい」と思いましたが、なかなか連絡をとることができませんでした。これまでに勤めてきた病院ではてんかんであることが明らかになってしまうと、先輩や同僚、先生からさまざまなことを言われたことがあり、内定が決まった後で「正社員では雇うことはできないけどパートとしてなら雇ってあげるから辞表を書いて」と就職前に言われたこともありました。仕事において、てんかんが原因で辛い思いをしたことから「てんかんの専門病院でもまた同じように扱われたら怖い」と思い、連絡を取ることができずにいたのです。
 福智クリニックに初めて連絡をしたきっかけは、もう30歳になりそろそろ本当に働きたいと思う領域で仕事をしたいと強く思ったことと、波の会の仲間の話を聞いたり発作を目の前にする中で、日頃からてんかん仲間の役に立ちたいと強く思うようになったためです。電話をする前にクリニックを見に行き、建物の外に「看護師募集」の張り紙がないか探したこともありました。初めて電話をした時には「今のところ看護師は足りているので募集していません」とのお返事。福智クリニックと縁がなかったんだと気落ちし、一人で泣いていました。それではいけない、と思い直して「もし看護師が足りなくなった時にはいつでもいいので一番に電話をください」と電話しました。たった一ヶ月でスタッフが足りなくなるわけがないことを考えなかった私は連絡がないことに痺れを切らし、また電話をしました。すると驚いたことに「実は連絡を待っていたのです。一度面接に来てください。」と言われたじゃありませんか!まず初めは事務長との面接でした。なぜ福智クリニックで働きたいのか聞かれた時、「いよいよきたな」と思い、自分がてんかん患者であることを言おうかどうしようか迷いました。正直なことを言いたかったのですが、この時には「てんかんの友人がいるので」と全くの嘘ではない、でも本当ではない理由を言ってしまいました。事務長との面接は無事に終わり、数日後、院長との面接がありました。院長に働きたい理由を聞かれた時には、自分がてんかん患者であること、てんかん患者の役に立てる場で働きたいと思っていたことを正直に話しました。「もしそれが理由で雇ってもらえなかったらそれまでだ」と、腹をくくっていました。それに続いて院長は私の病状や内服薬について聞かれ、最後に「そういう人を待ってたんだよ」とおっしゃってくださいました。

◆3.いざ、働き始めて

 就職してから10ヶ月が経過しましたが、ようやく業務の流れをつかむことができてきたところです。今のところ発作もありません。職場の先輩には就職して間もなく、「どうしてここで働きたかったの?」と聞かれた時を良いきっかけとして正直にてんかんであることを話しました。てんかんを理解している先輩方なので、偏見を受けたような気持ちになったことはありません。私だけにではなく体調が悪そうなスタッフを見かけたら、本人が言い出す前に声かけをしています。一度教えていただいことでもわからないことがあれば丁寧に先輩が教えてくれます。ミスや足りないところはお互いにフォローをし合います。
 職場に不満はありませんが、今の自分に満足できません。「てんかん仲間の役に立ちたい」と思って福智クリニックに就職できたにもかかわらず、具体的にどのように取り組んでいけばいいのかわからないのです。院長はやりたいことがあればどんどん取り組みなさい、と応援をしてくださる方です。私よりも新しく入ったスタッフはアイデアが豊富で、私は全力でついていかなければ置いてきぼりになりそうです。私は看護師という視点からできることを考えて取り組み、自分のペースで長く勤めていきたいと思っています。

◆4.できることから…

 てんかんを含む精神障害者は仕事を見つけることが難しいというのに、こんなにも恵まれた職場と巡り会えた私はとてもラッキーだと思います。今後、就労を目指しているてんかん仲間にも諦めないでほしい。私はずっとてんかんを扱うクリニックで働きたいと思っていました。それでもなかなか福智クリニックと出会うことができず、職場での辛い経験をして一時は看護師の職に就くのは二度とやめようと思っていたこともありました。しかし、なんとか諦めずにいたら、今の職場と出会えたのです。
 てんかん患者の私たちだって夢を抱いているし、その夢を叶えるために努力をするべきです。健康な人に比べたらその努力も並大抵なものではないでしょう。しかし見ていてくれる人はきっといます。チャレンジすることを諦める前に、自分のスピードで、自分の症状に合わせてでいいから、取り組んでみませんか?楽しみと夢を持てる自立した生活を手にするために。