第42回 福智クリニック家族会

参加 32人 2004年4月9日 T. Fukuchi

統合失調症の診断

次の症状のうち2つ以上が見られる
・妄想、幻覚、まとまりのない話、ひどくまとまりのない行動、感情や意欲の欠如
・これらの症状のために生活能力が低下している
・それらの症状が6ヶ月以上続いている
・薬物や身体の病気が原因したものではない

正確な診断を得る

統合失調症の症状群
陽性症状、陰性症状、認知的症状、気分の障害

統合失調症の治療

・治療法による再発率の違い
・薬物療法は脳の働きを維持する
・薬物療法を行っている場合の経過
・違法薬物は統合失調症と類似の影響を脳に与える
・統合失調症と個人精神療法
 自己洞察を求める精神療法と現実適応を求める支持的な個人精神療法
・力動的家族療法は再発予防に効果がない
・個人的介入の効果
 精神療法家ではなくソーシャルワーカーや職業訓練に当たるスタッフ。
 援助の方法が回復目標に直接関係していることが大切。
・リハビリテーションプログラム
・SSTの効果

福智クリニックが目指す社会復帰について
 現在デイケアに多数のメンバーさんが通院している。しかし、なかなか就労、単身生活へとつながらないのが現実。デイケアでのプログラムと、社会での就労の間に大きな段差があると思う。そこを埋めるための施設は作業所ではない。作業所は、一般就労へのステップとはなりえていない。デイケアよりも対人関係を結ぶ練習の場が少ない。
 大きな階段を埋めるためのもう一つのステップが必要と感じている。それは医療施設ではなく、かと言って患者さんのみが集まる就労の場でもなく、患者さんが一般社会に対して門戸を開き地域の人たちが自然に利用できてそれでいて患者さんも安心して就労できる場の提供が必要だと思っている。
近々、クリニック近くにその場がオープンする予定。

次回、リハビリテーション、薬物療法について
5月14日金曜日


第43回 福智クリニック家族会      

参加 33人 2004年5月14日 T. Fukuchi

統合失調症の治療 前回の続き
家族が病気の経過に及ぼす影響
文化は統合失調症の経過に影響する
治療効果は相補的
病気の経過は力のバランス
 病気の性質と症状の激しさ
 薬の効果
 本人がどの程度治療をまじめに受けているか
 本人が自分の回復ゴールに達するためにどの程度努力しているか
 本人が回復するための必要なニーズに対して家族の反応
 地域が病気を患っている人をどの程度受け入れ、資源を提供し、回復の機会を与えているか
 本人がどの程度リハビリテーションに能動的に参加しているか
有効な治療を受けた統合失調症の経過
 リハビリテーションは一生を通じて繰り返し受けなければなりません。リハビリテーションを受けると、生活能力が向上し、症状の軽減がみられるが、やめると生活能力がまた低下する。
早期からの薬物療法は統合失調症の経過を向上させる。
治療の遅れは経過を悪くする
再発を繰り返すごとに治療が困難になる
思春期における統合失調症の症状

統合失調症の治療
 専門的。薬物療法の必要性。心理社会的リハビリテーション。家族の対処能力によって経過がよくなる。早期治療は悪化を防ぐ。一生を通しての治療が必要。

次回6月11日6時から
「薬物療法について」


第44回 福智クリニック家族会 

    

 参加 30人 2004年6月11日 T. Fukuchi

統合失調症の治療薬物療法
抗精神病薬治療法
薬物は脳の働きを回復
 左上が健常者、右上が統合失調症患者、下の4枚の写真はそれぞれ薬物治療後、3時間、12時間、24時間、7日後の脳の画像。20%が右下に回復、仕事をして独立して生活ができる。30%が左下の画像に回復、意義ある人生を送れるがフルタイムの仕事は難しく、独り暮らしできる人も半数。30%の人は右真ん中から左下にかけての画像で周りからいろいろな援助が必要。のこり20%は薬物治療を受けても効果見られない。
抗精神病薬は以下の症状を軽減する
 幻覚、妄想、奇異な行為、敵意と攻撃性、思考障害
薬物療法により知覚が改善する。
抗精神病薬の効果のメカニズム
抗精神病薬服用後の作業遂行能力の変化
 高度な脳機能(抽象思考、問題解決能力、洞察力)を改善
抗精神病薬の作用
 不安、恐怖を軽減。知覚の正常化。エネルギーが回復。正常な思考や問題解決ができるようになる。
副作用
 40%は問題ない。60%は以下に示す副作用のひとつ以上を示す。
 口渇、体重増加、眠気、便秘、手の振るえ、何となく体が重い、動きが鈍い、そわそわする、体の一部特に顔の筋肉や首などが緊張して動かない、目がかすむ。
副作用は初めて服用したときが一番ひどく徐々に軽減。
問題となる副作用
 活気がなくなる、錐体外路症状(アカシジア、パーキンソン症状、急性ジストニア)
副作用への対処方法
 体の順応の可能性。就寝時に服用。薬剤の切り替え。抗パーキンソン薬の投与。抗精神薬の減量。

精神障害者社会復帰施設について
 援護寮、生活支援センターの今後の予定
次回7月9日6時から
「薬物療法について」続き


第45回 福智クリニック家族会 

     

参加 28人 2004年7月9日 T. Fukuchi

統合失調症の治療薬物療法
前回からの続き

遅発性ジスキネジアについて
 不可逆性の不随運動をきたす薬の副作用。服薬中のおよそ40%は一過性に軽微な症状。25%で発現。抗精神病薬の総服薬量と直接関係。幸いにして発現者の60%は軽微。発症した12%(服用者の3%)は、腰から上半身が曲がったり、体全体が曲がる。
遅発性ジスキネジアの予防

抗精神病薬の作用と副作用 
緑の部分の過剰なドーパミン量を下げることにより統合失調症の症状を軽減
赤い部分のドーパミン量を減らすことにより、筋肉の動きに影響を与える副作用
 さらに前頭葉のドーパミン活性を下げることで、陰性症状が強くなる。
統合失調症の症状群

陰性症状の分類

抗精神病薬の陰性症状への影響

抗精神病薬の認知機能への影響

新規抗精神病薬(非定型抗精神病薬)の特徴

新薬の利点
リスペリドン(リスパダール)、オランザピン(ジプレキサ)、
クエチアピン(セロクエル)

精神障害者社会復帰施設について
 援護寮、生活支援センターの概要
 グループホームの概要
次回8月13日6時から
「SSTについて」続き


第46回 福智クリニック家族会

      

               2004.8.13  SSTについて 峯 浩子

SSTとは…
Social Skills Training −生活技能訓練
生活技能とは、自分のニーズを上手く実現する目的で、他の人と意思疎通するときに、行う個々の行動。
SSTは人付き合いに際して話す内容と話し方の両方を改善することが目標。
SSTでは患者自身が自分で判断し、楽に前向きに行動できるようになることを目的に援助する。
積極的な意味で患者自身のもっている力を高め、自信を持ってストレスをのりきれるような援助を提供する。

SSTがなぜ必要か
精神障害を持つ人々は他人との人間関係の問題に直面していることが多く、そのため地域生活への適応困難や生活の質の低さがおこりやすい。
 <社会的な能力の低さは生活技能の欠損と関係が深い>
生活技能の困難→会話を開始するのが困難・低い単調な話し方・視線を合わせられない等
生活技能の改善を援助すれば地域社会でのその人の生活能力を高めることができる。
生活技能の欠損の原因
生活技能を十分身につける前に発病した
 良い役割モデルのいない環境で育った
 良い生活技能を学んでいたが、その後発病し、他の人々から引きこもったため技能を失った 

訓練する技能
コミュニケーションのための技術
@ 受信技能
A 処理技能
B 送信技能

受信、処理、送信のサイクルがスムーズに回ることで、社会生活での人との関係における
ストレスを減らし患者自身が楽に過ごせることになる。

SSTの種類
@問題解決技能訓練  処理技能に焦点をあてたSST                                                          問題に直接取り組むのではなく、取り組み方を考える認知的技能の練習
A基本訓練モデル    受信、送信に焦点をあてたSST
                実際に問題にはたらきかける行動的技能の練習
Bモジュール        服薬自己管理、症状自己管理、基礎会話、余暇の過ごし方等の各課題領域
                ごとに自立した社会生活のための技能が整理されマニュアル化されたもの          

SSTの実際
○SSTセッションの流れ(ロールプレイによる技能練習の仕方)

(1) はじめのあいさつ
(2) 新しい参加者・見学者を紹介する
(3) SSTの目的とルールを確認しあう
(4) ウォーミングアップ (簡単なゲーム、楽しい話題など)
(5) 宿題の報告を聞く
(6) 練習課題を明確にする
(7) ロールプレイで技能を練習する
   場面を作る(人、場所、行動 必要な登場人物を本人に選んでもらう )
   1回目の練習をする(ドライラン)
   正のフィードバックを行う
   改善が必要な場合には、改善点を提示するモデル行動を示す(モデリング)
   2回目の練習をする(再演)
(8) 正のフィードバックを行う
(9) 実生活の場面での練習を計画し、宿題として具体化する
(10)宿題カードに内容を書き込む
(11)まとめ・一言感想
(12)次回の予告と終わりのあいさつ

○問題解決技能訓練の手順
問題の設定
↓ ・相談したい人に、その内容を話してもらう
  ・この場で話し合うテーマを設定する 
解決案の産出
↓ ・問題に対する解決案を全員で、できるだけ沢山出してみる 
   解決案のメリット・デメリットを考える 
↓ ・解決案のメリット、デメリットを全員で考え板書していく
解決案の選択
↓ ・相談者が現状でできそうな解決案を選ぶ
  ・相談者が実行する解決案を選択する
実行の計画を立てる
  ・ロールプレイを用いて練習する

当院でのSST
初級グループ: 共通課題練習 (オリエンテーション、まとめを含め全13回)
          ほめる・あいさつ・会話を始める・ゴーサイン・ノーゴーサイン
          友達をつくる・電話をかける、受ける・頼む・断る・あやまる・お礼を言う
          困った時に聞く
中級グループ: 個人個人の目標に向けた練習課題を設定しロールプレイを用いて練習を行う
           時に問題解決技能訓練を取り入れる。
フリー:      グループに関係なく参加可能。練習課題を設定し練習

*各グループとも個人の長期目標・短期目標を設定

家族としての援助
本人とのやりとりの中でお手本になる。
実際の場面で本人が技能を使用することを励ましたり、促したり、生活技能を上手く実行したときにほめて正のフィードバックをしたりすれば本人の役に立ちます。

次回の家族会は9月10日(金) 18:00〜
精神障害者社会復帰施設について
援護寮、生活支援センターの概要
グループホームの概要



第47回 福智クリニック家族会

      

◇精神障害者社会復帰施設とは
   精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定された施設のこと。

1.精神障害者生活訓練施設
  精神障害があるために家庭での日常生活には支障があるが、適応できるように必要な訓練や指導を行って社会復   帰の促進を図るための施設。デイケアや小規模作業所などには参加できる程度の方を対象とする。退院後すぐに   は単身生活ができない方などが利用することが想定されている。利用期限は2年。必要であれば1年延長すること   ができる。

2.精神障害者授産施設
  一般の事業所では働くことが困難な精神障害者が将来自活することができるように必要な訓練を行う施設。施設に  より金額は違うが月々利用料を支払い、訓練作業に参加することで一定の手当がもらえるというのが一般的。訓練  内容も施設によって異なるがクリーニング作業、喫茶店作業、製パン作業などが多いよう。通所の期限は法律では  定められていないが各施設によって定めているところもある。
  通所型と入所型があるが、今後は入所型の授産施設は作らない方向にある。通所型の中には小規模授産施設も   ある。授産施設に比べ定員が少なく、職員配置、施設基準が緩やかで、小規模作業所の運営を安定させるために   新しく定められた。

3.精神障害者福祉ホーム
  長期入院などにより住居の確保が困難な方が利用し社会復帰を図るための施設。生活訓練施設に比べ、生活上の  困難よりも住居確保の困難に焦点が当てられているため、利用中の生活訓練などは少ない。職員配置も管理人と  いう形になっており、生活訓練施設よりも少なくなっている。長期入院をしていた方の退院後の受け入れ先として利  用されており、現状では病院敷地内または病院隣接地にあることが多い。入所期限2年となっているが延長できる。

4.精神障害者福祉工場
  一般の事業所で働くことが困難な方を雇用し、必要な指導を行っていく施設。労働関係法規が適用される施設で、  最低賃金などが保証される。最近ではこの施設を増やしていくことよりも一般の企業での障害者の雇用率の算定を  求める動きなどが活発。

5.精神障害者地域生活支援センター
  精神保健、精神障害者福祉に関する相談に応じ、必要な指導や助言を行う施設。各関係機関との連絡調整なども  担っている。24時間365日の相談が求められているが、夜間の電話相談は携帯電話で受けているというところも多  い。生活支援センターを利用するには基本的には利用登録をする。その際年間登録料などが必要となってくる。登  録をしなければ利用できないというものでもない。

その他精神障害者居宅生活支援事業など

1.精神障害者居宅介護等事業
  ホームヘルプサービス。日常生活を営むのに支障がある精神障害者の自宅で掃除、洗濯など厚生労働省で定めら  れた内容のサービスの提供をする。料金は世帯の生計中心者の前年の所得額で変わってくる。利用をするには精  神障害者保健福祉手帳をもっているか、精神障害を理由として障害年金を受けていることが必要。

2.精神障害者短期入所事業
  ショートステイ。自宅での生活が一時的に困難になった方が短期間(原則7日間)入所する。いつも面倒を見ている家  族が病気で入院をする、旅行に行くなどの場合。生活訓練施設などに併設されている。

3.精神障害者地域生活援助事業
  グループホーム。単身生活をするには自信がないが共同生活には支障がない方が共同生活を行い、食事の提供   や相談など日常生活上の援助を受けることができる。入所の期限はないことが多く、一生の生活の場としても考え  ることができる。世話人と呼ばれる職員が食事の援助や相談などを行う。

4.精神障害者小規模作業所
  法には規定がなく、精神障害者が10〜20人集まって、作業やレクリエーションをしている。利用料が必要なことが多  いが、参加することで手当てがもらえる。

◇福智クリニックの計画している施設について

○生活訓練施設(援護寮)
 定員   20名(すべて個室)、ショートステイ2名
 利用料 30,000円(予定)
 職員   施設長
       PSW 4名
       事務員 1名
       指導員 1名
       顧問医
  
17年10月オープン予定

○地域生活支援センター
 登録制
 登録料 月500円(予定)
 職員   施設長
       PSW 2名
       非常勤職員 2名
 
 17年10月オープン予定

○グループホーム
 定員   6名
 利用料 35,000円(予定)
 職員   世話人1名
  
16年10月ごろオープン予定

  全施設スライドの図面参照



第48回 福智クリニック家族会

      

参加29人 2004年10月8日 T. Fukuchi

前回からの続き
抗精神病薬の維持量と再発率

抗精神病薬の再発予防効果

低用量維持療法について

では症状の安定しているときの維持投与量はどのように決めるか?

抗精神病薬は再発を減らす
心理社会的リハビリテーション(デイケアでのプログラムはそのひとつ)

現在の生活能力と改善可能な生活能力

最終的な病状の程度は次の要因に影響される
病気の重さ、薬物の効果、本人の勇気、家族の反応、地域の反応、治療システムの反応

治療戦略

薬が症状を軽減した後、心理社会的リハビリテーションにより意義ある人生への一歩を踏み出す

心理社会的リハビリテーション1

心理社会的リハビリテーション2

統合失調症における雇用の可能性

生活技能は習得できるし保持できる(心理社会的リハビリテーションは生活技能の習得に重点を置く)

生活技能訓練は再発率を下げる

次回
∴ 11月12日金曜日午後6時より
デイケア学会参加報告:児玉看護士、草野看護士

∴ 12月10日:報告会
∴ 平成17年1月:心理社会的リハビリテーションの続き



第48回 福智クリニック家族会

日本デイケア学会「改革の時代におけるデイケア」に参加しての報告/平成16年11月12日

 

草野裕美・児玉直江


精神科病床の現状
・患者一人当たりの1ヶ月あたりの入院費
 身体疾患の場合⇒60万円
 精神疾患の場合⇒平均30万円
・スタッフの数
  身体疾患の3分の1か半分
患者数
人口10万人対の受療率をみると、
 1975年以降精神障害は高血性疾患についで常に2位の座を保っている。

欧米では精神科病床は人口1万人に対して、10床台あるいはそれ以下
 わが国は約28床
 平均在院日数との外国との比較は際立って長く、最近ようやく400日を切り
 1年に近づいた
 2002年、65歳以上は12万人以上で、全入院患者に占める割合は37.3%と3人に
1人以上が高齢者

精神科専門病棟の現状

病棟数(棟) 病床数(床)
精神科急性期治療病棟 132 6541
精神療養病棟 1144 62635
老人性痴呆疾患病棟 274 20373
老人性精神病病棟 395 14732
アルコール・薬物病棟 107 5527
児童・思春期病棟 20 711
身体合併症専門治療病棟 63 2017
総計 2135 112536

精神科デイケアについて


デイケアの数=1200箇所

デイケアの役割
 精神障害者の病状の改善・再発・再入院の防止・生活技能の改善・再獲得・対人関係の
改善・家族負担の軽減・生活圏の拡大・地域生活の維持と適応などの支援

「変革の時代におけるデイケア」 大会長 窪田 彰(錦糸町クボタクリニック)
 2004年に入り精神障害者への介護保険の導入が議論の遡上に上がり、デイケアの一部を介護保険に切り替えてゆく可能性もでてきている。
医療としての精神科デイケアと介護としてのデイサービスに分けられてゆくのでは。
「治療共同体概念のデイケアにおける役割」  講師 鈴木純一(川越同仁会病院)
ACT(Assertive Community Treatment)<包括型地域生活支援プログラム>
訪問が中心となり、脱施設化。他職種との連携が重要。
<介護保険の問題点と利点>厚生省ホームページより抜粋
問題点
・精神のヘルパー派遣は家事援助が中心だが、本当に必要なのは相談支援である。
・ 症状が軽いときの支援は切られてしまう
・精神では様々な要因によって、状態が変化するので、認定が難しい。
・月約3,000円の介護保険の負担金
利点
・精神障害者の施設やヘルパーなどの介護制度が改善される
・過疎地などの町村部で障害ヘルパーを殆ど行っていない地域でもヘルパー制度が受けられるようになる 
 など 

             
ACT(Assertive Community Treatment)<包括型地域生活支援プログラム>とは?
ACTは、重い精神の障害をもつことで頻回入院や長期入院を余儀なくされていた人々が病院の外で質の高い生活をおくれるように、様々な職種の専門家から構成されるチームが援助するプログラムである。精神障害者の地域生活を支援するケ−スマネジメントの中で最も集中的・包括的なモデルの一つであり、プログラム利用者が実際に暮らす環境に出向く訪問の形でほとんどのサービスが提供される。


○分科会   「地域生活支援」
「長期入院者が生活者に還るための関わりをとおして」 松原病院社会復帰部 
 平成15年3月より退院した長期入院者10名。各々の入院期間は14年から53年間に至る。彼ら長期入院者が退院し、地域のグループホームに住むにあたり、各職種のスタッフが当人のニーズを尊重した支援を一緒に組み立てていった。デイケアでは、自立支援プログラム、簡単料理くらぶ(一品料理を作る)ひとり暮らしの会、買い物ツアーなど彼らのニーズのもと、プログラムを確立させた。
 生活満足度、ハード面では大丈夫であったが、心理面では不安が強かった。
「地域生活を支えるナイトケア」 クボタクリニック 
当院(クボタクリニック)のナイトケアは開設10年目を迎えた。プログラムは夕食作りと団欒の場の提供で、生活の一部として週4日毎日利用しているメンバーが多い。料理プログラムは一般的に料理の味よりも作る過程に重点が置かれる事が多いが、当ナイトケアでは開設当初より、美味しい家庭料理をきちんと作ることを大切にしてきた。ナイトケアで食事を提供することは珍しくないが、この「美味しい夕食をみんなで作って食べる」という枠組みを毎日のプログラムとして維持しているグループはかなり特殊であろう。
・ 当日メニュー決め・栄養バランスとカロリーを考えた食事内容・1食600calメンバーが毎日カロリー計算をする、週に1日は肉なしの日を作っている・調理作業の利点:沈黙が気まずくなく、無理に話さなくてもいい、人と話すことが苦手でも入りやすい・札幌病院では栄養士が関与している・居場所となるグループの存在は精神的な支えとなりうる。


「SST」「心理教育」
「診療所デイケアで実地するSSTにおける構造化の工夫」 せりかわ医院
・基本訓練モデル継続の困難
・個人的になりすぎて関心が持ちにくい
・自分が出来ないことに焦点が当たりがち
・良かった点を誉める時ぎこちなさが抜けない
・ 工夫として新たに加えたこと
・共通課題制で全員にとって身近な課題
・途中休憩を取って「ちなみに」と具体例をホワイトボードに書いておく
・順番決めの工夫バトン方式&枠順方式
・スタッフが相手役をつとめる
手順の改正を行ってからは、メンバーが発言しやすく、積極的に取り組めるようになってきている。
「統合失調症患者に対する心理教育の効果について」 福岡大学医学部精神医学教室 
近年、医療の現場では患者への情報開示が求められている。統合失調症患者においも
例外ではなく、そのため家族教育のみならず、統合失調症患者自身に対する心理教育
が注目されている。一方で統合失調症患者が自信の疾病についての知識を得ることで、
抑うつ症状を併発してしまう危険性も指摘されている。
病識欠如評価尺度および抑うつ重症度評価尺度での評価により、心理教育の効果と安全性が確認された。


「園芸」「調査・評価」
「進化するプログラム〜目指せガーデナーからベルサイユ〜」 古川緑ヶ丘病院デイケア 
デイケア所有の庭があるため、手入れが欠かせなかった。デイケア開所当初から、園芸プログラムを取り入れていた。園芸=草むしりというイメージがあり、1番人気のないプログラムであった。
<工夫した点>
 ・ガーデニングは、できるだけ、達成感を持ちやすくする
 ・ガーデニングは草むしりだけでなく、何かを植えたり、種を蒔く
 ・ガーデニングを終えたところをみんなで見て歩き、みんなで振り返る
 ・分かりやすい説明を行い、内容・目標を明らかにする。それによってメンバー自身が考えて取り組めるようにする
 ・継続したプログラムのため、何度か取り組んでいるうちになれて自身がつく
 ・個人に合わせた活動、ペースで取り組める。個人に合わせて関わりが持てる
  ハーブを取り入れる
作った花でポプリ作り、パン作り、創作活動、そば作りなど様々な活動を取り入れている。その中で、メンバーの意欲的な発言や関心が窺えるようになった。
デイケア学会では、介護保険が導入されることに重点が置かれているように感じました。また今後、多職種における訪問看護、就労支援に重きが置かれていくように思います。入院という守られた環境にいた人たちが、自分の事を自分で決め、地域でいかに生活していくのか。スタッフも一緒に考えたり、動いたりしながら、これまでとはちがう支援をしていかなくてはいけない時だと思いました。スタッフはもっと外に出て、地域で、生活するメンバーの生活、隣近所との交流などの在り方にも気を配り、上手くその地域に溶け込んだ生活ができるように関わり、私たちだけではできない事は、関係機関に依頼し、メンバーがよりよい生活が営めるように、具体的な支援を続けていく事が大切だと思いました。

  精神科 「デイケアの機能と役割」
1 治療型デイケアの機能を確立・発揮するために
THPメディカルクリニック 石井 政江(OT)
・ パートタイム方式(週1〜3回)をとることで生活範囲がひろがる。スタッフも怠らず、メンバーと関わりをもつようになる。
・ 利用者を治療の主体とすること。本人の言葉として「〜したい」ということを出してもらう。ニーズを具体的にプログラムに結びつけることが大切である。
・ 地域関連施設や制度を熟知し、社会サービスやケアを精神科治療の側面からコーディネイトしていく力をつけることが課題。
・ いくつかの関連施設や制度に関わっている利用者のケアカンファレンスを実施することで、地域の精神関連施設との連携を深め、利用者の地域での生活の安定・充実をはかることも過大のひとつ。
2 精神療法の視点から見た精神科デイケア  けやきの森病院 田口 善之(Dr)
・ メンバーに対応する時、スタッフは「こころの専門家」として機能することが求められている。そして、「カウンセリングマインド」をもって接することが大切である。
・ メンバーにとってスタッフは薬にもなり、毒にもなるといわれる。そうならないために、スタッフは何故その患者に対応することが苦手なのかを考える必要がある。
3 メンバーのニーズに応じて作りあげていくデイケア
      医療法人 三精会 汐入メンタルクリニックデイケア 吉家 洋(PSW)
・ 一人一人のメンバーの意思に耳を傾け、プログラム作りをしてきた結果、年齢も病気も様々なメンバーが毎日参加した。
・ プログラムに参加しないメンバーの他メンバーへの影響として、参加しているメンバーからは自分のモチベーションがさがるという不満があった。それに対しては、個別に話したり、ミーティングで提案したりした。
4 精神科急性期デイケアの試み   近森病院第二分院 福間病院 渡辺真理子
・ 退院後、デイホスピタルを利用した患者と外来通院のみだった患者との予後を比較すると、デイホスピタル通所群は三分の二が復職、もしくはデイケアや作業所などに通所し、さらに年々復職率が上がっていった。
5 当院デイケアにおける役割とプログラムの考察
            医療法人長尾会・寝屋川サナトリウム 黒川順子(Ns)
・デイケアの役割として、入院者と通所者の交流の場を設け、通所者が出前で体験談を伝え、「今後、よくなるイメージ化できない」状態から、職員でもない当事者と接することで、イメージ化を助けられないだろうか。

     精神科シンポジウム
 
 
数値資料からみた精神科デイケア  国立精神・神経センター精神保健研究所 
                       精神科保健計画部長 竹島 正

・平成9年から平成16年までに精神科デイケアの施設数、利用人数は増加している。精神障害者社会復帰施設も増加している。
・厚生労働省からは「入院医療主体から、地域保健・医療・福祉を中心としたあり方転換的な考え方として示しており、精神障害者の退院・社会復帰、社会参加は精神福祉における最重要課題となっている。


 
 
精神科診療所の立場から    三浦メンタルクリニック 三浦
・精神科病院を退院した患者さんを地域で支えていく上で、服薬が継続され、治療が中断しないことが第一に重要なことである。
・第二に重要なことは、障害者同士が仲間になることである。
・さらに第三者の気楽な援助が重要である。
・精神科デイケアは障害者にとっても、支援するスタッフにとっても、成長の場となっている。

 病院デイケアの立場から    都立松沢病院デイケア 伊藤 通郎
・デイケアの参加者が少ないため、入所前後のスタッフの関わり方を見直した。
・まず、導入として、待ちの姿勢ではなく、こちらから出向くようにした。関わり方としては、(超)受容的(超)支持的にして、問題の早めの介入などを試みた。安心感のある雰囲気を作るためのスタッフの姿勢についても留意した。
・問題点として、二つのデイケアの二重構造、依存性が高まる、スタッフの燃え尽き、利潤が上がりにくい、などがある。

 ACT(包括型地域生活支援プログラム)の立場からみた精神科デイケアの役割について
    国立精神・神経センター精神保健研究所 西尾 雅明

・ACTがデイケアと異なる点としては、対象者を重症精神障害者に限定していること、訪問による在宅での支援を中心にしていること、24時間対応を行うこと、などがあげられる。
・生活スキルをトレーニングしてから生活の場で実施するよりも、まず実際の生活の場でトレーニングすることを訪問支援により可能にする点が大きな特色である。
・その背景には、入院医療から地域生活へとかわってきていることがあげられる。デイケアとACTとが利用者のニーズに合わせ、選択肢として用意されていることが望ましい。

  研修会 精神科 「デイケアにおける就労支援」
                  東京福祉大学  倉知 延章 

 働くことを支援することは、働いてやっていけるという自信や誇りを回復させることである。働くということはリスクのあることであり、病院を退院して生活するだけでもリスクはある。デイケアは医療であるため、再発させないようにするが、それは働く力を抑えることになっているのかもしれない。
デイケアができることには、
・就労相談(誰でも)→専門機関につなげる
・就労準備の一部
・関係機関とのネットワーク作りへの参加
・医療の役割をきちんとこなす(薬の調整など→症状を抑えるだけでなく、働くのに支障のないようにする)などがある。
医療機関が支援する条件は、
・ 専門家主導から本人主導の支援をすること、専門家が手や口を出しすぎて本人のエンパワメント機会を奪わない。
・ 専門家が決定、責任を負う必要がない。
デイケアの犯しやすい過ちは、
・ デイケアで作業を行うこと、デイケアでできることは本人のニーズに基づいて「自信と誇りの回復」と「持久力と集中力の養成」である。
・ 自己完結型の支援を、目指すこと、すべての支援をデイケア内、院内、法人内で完結しようとする。
・ 就労までも医師の指示によること、働くことはどのような生き方をするかということなので、本人の意思によるものである。
さいごに、
・ 関係機関との連携をとること、特に労働関係機関との連携をとる。
・ 支援モデルの転換をする。
・ デイケアが以前の「入院」と同様にならないようにする。
・ 就労支援は、生活支援+リハビリテーションであり、医療ではない。


第50回 福智クリニック家族会

2004/12/10 家族会資料
アメリカでの社会復帰プログラム"ヴィレッジ"について
小池 敦子


ヴィレッジとは?

カリフォルニア州 ロングビーチ市(人口45万人)においてロサンゼルス郡精神保健協会が運営する精神障害者の社会復帰支援プログラム。精神障害者の生活を満たすために治療、快復、家族、地域のサポート、自助活動と調和の取れたサービスを提供する最初の統合サービスモデルである。

T 歴史的背景
1950年代・・・州立病院での隔離収容施策から1963年ケネディ大統領による脱施設化施策への転換によるホームレス、劣悪な地域生活の問題。
1987年・・・精神障害者の家族や当事者、専門家らが州の精神保健制度に対する苦情を当時の副知事に訴え、実態調査を行い統合されたサービスの必要性が提言された。
1989年・・・州法AB3777が可決され、3年間のモデル事業として民間からプログラムを公募した結果、3つのモデルが選定された。その一つがヴィレッジのプログラムである。
                     ↓
3年後に独立した評価機関の評価により、再入院率の低さや就労、ケースマネジメント、
社会生活という点で効果が立証され、恒久的な予算が確保された。

U ヴィレッジの位置づけ
 1.アメリカ精神保健システムの中でのヴィレッジの位置づけ 
    アメリカでは、重度の精神障害者と軽度の精神障害者のための精神保健システムがあり、また公的なものと私的なものがある。ヴィレッジのプログラムは重度の精神障害者を対象とした公的な精神保健システムである。アメリカでは行政と運営が別になっており、連邦政府が基本理念を掲げ、各州政府が制度化、各郡が目標設定、地方自治体が管理し、ヴィレッジの運営母体である精神保健協会のような非営利団体(NGO)が運営している。

 2.地域社会とヴィレッジ 
    ヴィレッジでは建物内部に就労や憩いの場が存在するが、地域の中で普通の暮らしをすることを目標としている。一般市民として職業訓練や娯楽、就学においても地域の資源を活用することに重きを置いている。例えば地域の職業訓練校や地域で行われる行事やカルチャースクール、就学では一般短期大学の利用などである。触法患者については刑務所内に精神科の治療施設があり、刑罰の決定までそこで治療を受け、刑期を終えた患者はヴィレッジに登録されるようになっている。治療や危機介入は提携している病院で提供される。

V ヴィレッジの基本理念

 "精神障害"はその人の人格の一部にしか過ぎない
1. 必要な精神科医療も含めたサービスの調整と統合
2. 普通の地域社会での普通の生活
3. 徹底した自己決定(Member Driven)
4. チームによる支援、(Dr.もチームの一員)
5. 就労、就学支援 (雇用開発の専門家がいる)
6. 社会参加 誰でも地域社会で張りのある人生を楽しむことが出来る
   (人間関係、付き合い、レクリエーションの専門家がいる)
7."失敗は得がたい経験、成長の過程"との認識
8.二重障害に対処する専門家が常駐
9.生活技能訓練は実生活で(SSTや作業所の形態はない)
10.結果の評価:目的の達成度、経済性とクオリティーオブライフ
11.スタッフとメンバーの関係は"大人と大人"の関係

W ヴィレッジ対象者の変遷
1990年モデル事業開始当時、ヴィレッジの対象は18歳以上で重度の精神障害を有し、年間医療費が30,000ドル以上の精神障害者であった。条件に合う対象を郡が選定しヴィレッジに登録するシステムだった。ヴィレッジ活動の社会的背景であるホームレスが対象に含まれなかった。1999年よりホームレスが対象に加わった。その後、18歳未満で発病し親からの自立を余儀なくされ、薬物依存やホームレスになるなどの問題が浮上し、青少年チーム(18〜25歳)ができた。

X ヴィレッジの組織と活動内容
メンバー総数 475〜500名
組織は大きく分けて6部門からなる
(サービスコーディネーションチーム、就労部門、地域社会統合部門、アウトリーチ部門、住宅・住居部門、金銭管理部門)

〈それぞれの部門についての説明〉
■サービスコーディネーションチームについて (ネイバーフッドチーム) 

 全部で4つのチームにわかれ、うち1チームは青少年チーム(50名)を受け持つ。
 残りの3チームはそれぞれ125〜140名を受け持つ

サービスコーディネーションチーム

就労部門
ディレクター 1名 就労のコーディネーター 1名
アシスタントディレクター 1名 現場のスーパーバイザー 1名
精神科医 1名 職場開発者 1名
金銭関係の計画者 1名 日雇い労働の開発者 1名
地域社会統合専門家 1名 日雇いのアシスタント管理者 1名
就労専門家 1名 地域での就労専門家 1名
パーソナルサービスコーディネーター 7名

メンバー一人一人を一人のPSCが担当するが必要があればチームで相談・支援を行う。
活動内容は対象一人一人の目標達成に向けた医療を含む生活全般に関するサービスを整えることである。目標達成の評価はメンバーとともに6ヶ月ごとに行っている。
精神科医もチームの一員として働き、ヴィレッジ内で診察・薬物の投与を行うことが出来る。治療は症状に焦点を当てることではなく生活の質に焦点を当てて、患者が症状を自分でコントロールできるように支援する。


■ 就労部門
就労部門には就労に関する専門家がスタッフとして勤務している。外部の企業に赴き職域開発を行っている。職域開発は障害を理解してもらっての保護就労を目指すのではなく、雇用者側のニーズとメンバーのニーズを合わせ、あくまで一般就労を目指している。またヴィレッジの建物内では売店、食堂、銀行、清掃、メンバーのライフコーチの仕事がある。ヴィレッジでの就労訓練期間は10ヶ月で、最低賃金1時間6ドル75セントを保障している。一般就労を目指しているのでヴィレッジ内就労も契約に基づいており、契約を満たせない場合は解雇することもある。就労部門でメンバーが就労できないもっとも障害となったことは、自分たちが患者としての役割しか知らないことや、自分たちは何も出来ないといった感覚であった。

■ 地域社会統合部門
地域で行われるさまざまな行事にメンバーとともに参加しメンバーが地域に溶け込むことができるように活動を行っている。ほとんどの活動は地域で行われる。スタッフが企画し参加するための技術や知識を教育しともに参加するというスタッフ主導の活動から、徐々にメンバー独自に行事への参加を企画し一人で参加できるように段階的に勇気付け支援する。


■ アウトリーチ部門
ホームレス対象の部門。ホームレスのもとへこちらから出向いていって声をかけ、ヴィレッジのサービスを紹介する。精神障害、薬物依存、ホームレスでないことがわかったら、必要な情報を提供して帰ってもらう。またホームレスは誰でもヴィレッジの施設(洗濯機や風呂)が使え、ロッカー(私物を路上で管理しにくいため)を3ヶ月無料で貸している。


■ 住宅・住居部門
住宅・住居の確保を一般のアパートの大家さんと交渉して確保する。メンバーがハウジングコーディネーターとして働いている。引越しの手伝いや引越しをしたときのパーティなども開く。


■ 金銭管理部門
ヴィレッジ内に銀行があり、預金・引き出し・融資に関する諸手続きが一般銀行で行われているものと同じ仕組みで、コーチのもとでメンバーが体験・訓練できる仕組みとなっている。経験をつんだメンバーがコーチとして雇われている。