【 てんかん症例事例検討会 】

 福智クリニックでは,医療スタッフによるてんかん事例検討会を愛知医科大学と合同で開催しております。てんかんへの理解を深め、今後の治療に役立てるため、検討会ではてんかんの事例をもとに、診療の進め方、薬剤処方の際の注意点、発作の見分け方等、毎回様々な角度からの意見交換が行なわれています。
 当検討会には毎回10〜20名の医師・看護師・薬剤師・検査技師・PSW・臨床心理士をはじめとする医療関係者が参加し、事例検討を通して臨床能力を高める貴重な機会として活用しております。

第7回・てんかん事例検討会開催(08.08.06)  ・・・詳細
■第6回・てんかん事例検討会開催(08.06.27)  ・・・詳細
■第5回・てんかん事例検討会開催(08.04.23)  ・・・詳細
■第4回・てんかん事例検討会開催(08.03.27)  ・・・詳細
■第3回・てんかん事例検討会開催(08.02.27)  ・・・詳細
■第2回・てんかん事例検討会開催(08.01.20)  ・・・詳細
■第1回・てんかん事例検討会開催(07.12.15)  ・・・詳細


第7回・てんかん事例検討会開催(08.08.06)

 「てんかん症例検討会」が今月も当院で開催されました。お忙しい中、お集まりいただきました兼本先生はじめ愛知医科大学の皆様に職員一同感謝申し上げます。ありがとうございました。 簡単ではありますが、いくつか内容をご紹介します。

@社会訓練中の患者さんの今後の対応について
 問題点はてんかん発作に限られるものではありませんでした。そこで、発作内容、処方内容に加え社会訓練期間、知的問題、対人関係、親子関係、金銭管理など様々な問題を抽出して今後の対応を検討しました。本人にとってがんばれる範囲はある程度限定されるので、本人をどうこうしようとするだけではなく、継続的なサポートも考慮し、社会生活を送りやすい環境整備が望まれました。発作のコントロールが不良であったり、転倒発作があったり、知的な問題も抱えている患者さんは、どうしても親御さんが抱え込んでしまい、自立生活が進みにくい厳しい現状を再確認する内容でした。

A脳波に異常波は確認できるものの、発作消失が続いている患者さんの今後について
 成育歴、現病歴、現在の処方内容などを確認していきましたが、発作の内容が明確にはなりませんでした。現在が発作は起きている可能性もあるし、減薬をしても何が起こるのか見立てが非常に困難でした。もし、本人が減薬を希望されるのであれば減薬をして何が起こるのか説明すること、また、薬を元に戻しても発作が止まるかどうか不明であることを事前に伝える必要があると確認しました。本ケースでは小児科からの紹介でみえた患者さんの受け入れの難しさも指摘されました。診断や発作内容がはっきりしなかったり、子供から大人としての対応への切り替えも難しい場合があり今後の課題となりました。

B発作時に同じ言葉を繰り返す患者さんの診断について
 以前は強直間代けいれん発作もありましたが、現在は複雑部分発作しかみられず、ボーっとし、毎回同じ言葉を繰り返し叫びます。その内容を本人も覚えてはいません。右半球(劣位半球)に焦点のある部分発作では、このように再起性発語のみられる発作があるようです。発作のみを繰り返す発作には、部分てんかんに使われるカルバマゼピンが有効であり、前医の薬は無効であった可能性が指摘されました。

C下肢の間代発作を訴える患者さんの診断について
 上下肢の間代重積けいれんがみられるとのことですが、片側から他側へけいれんが移動する発作はほとんどみられず、また成人では間代発作のみの重積発作はみられない、とのことでした。硬直発作のみであれば成人でもみられるそうです。よって、てんかんではなく違う側面からの治療も必要と考えられます。

D顎ががくがくすると訴える患者さんの薬剤調整について
 意識ははっきりしており、周囲の音もわかるが、発語が難しくなるとの訴えもあり、スピーチアレストやその他の失語発作が疑われましたが、多角的に検討し失語発作と判断されました。また、ご本人は減薬を希望されていました。再び発作が出現するリスクはありますが、ご本人の意思を尊重し慎重に減薬をしていくことが考えられました。

 次回は、9/4(木)に愛知医科大学病院にて開催予定。


■第6回・てんかん事例検討会開催(08.06.27)

 「てんかん症例検討会」が今月も愛知医科大学で開催され、当院からも福智院長はじめ多くの職員でお邪魔してきました。お忙しい中、お集まりいただきました愛知医科大学の皆様に職員一同感謝申し上げます。ありがとうございました。
 簡単ではありますが、いくつか内容をご紹介します。

@両肩と顔に不随意運動が断続的に見られる男児
 不随意運動、脳波を丁寧に確認していきました。異常脳波は確認できるものの、その波形は子どもには出やすいもの(ローランド棘波)でしたが、不随意運動を説明できるものではありませんでした。2つの異なるてんかんの存在も完全に否定はできませんが、総合的に判断して心因的な背景を原因としたチックの可能性が高いのではないかと判断されました。今後は心理社会的サポートでの症状改善が期待されます。

A部分発作をみせる男性の経過報告
 発作内容を確認すると、発作内容は症候学的にも説明が難しいものでした。しかし、てんかんを持つ人には、てんかん人としてのアイデンティティがありむやみにそれを奪うことは避けなくてはなりません。だが同時に、このアイデンティティが「自分はてんかんだから○○○ができない。」と自己憐憫させ、現実検討を悪くさせ、さらには社会復帰を妨げている可能性もあります。両刃の剣のようなこのアイデンティティは、患者さんそれぞれの生活状況に応じて慎重に扱うべきであることを再確認しました。

B社会復帰が難しい男性の今後の対応について
 これまでの病歴を振り返りつつ、本人が訴える様々な形の発作を確認していきました。今後については、発作内容を整理し、多くの発作の中から治療目標を明確にすることが望まれました。しかし、発作を止めるだけでは本人の社会適応が良くなり、より生きやすくなるとは考えられませんでした。その為、本人が何を人生の目標とするのかを話し合っていくことも同時に望まれました。

C仕事のストレスや不安で心因性の発作が多くみられる男性の今後の対応について
 検討の結果、日中みられる発作のほとんどは心因性の発作と考えられましたが、睡眠時には過去の病歴から考えるに大発作が起こる可能性もあると指摘されました。睡眠時の発作も最近は見られないため治癒している可能性もありますが、本人の現在の状況を考慮しても、再び大発作が起こるリスクを負ってまで抗てんかん薬を抜いていく必要はないだろうと判断されました。

D症状からの判断が困難な男性の経過報告
 前回検討時には、脳波からの読み取りも難しく、発作のコントロール困難も考えられたため処方中であったデパケンRはそのままで、カルバマゼピンを挑戦してみてはどうかとの意見がありました。しかし、その後デパケンRを減薬しカルバマゼピンを追加していったところ1年以上発作が止まりました。前回からの経過、発作内容、薬剤調整などについて検討したの結果、カルバマゼピンが良い結果を招いていると考えられました。

 てんかんの患者さんの発作時の説明としてよく聞かれる「頭がボーッとする」という表現には異なる複数の原因が考えられると兼本先生よりご指導いただきましたので、最後にご紹介します。

 
 @見当識困難(現在の年月や時刻、自分がどこにいるかなど基本的な状況把握ができない)
 A認知機能低下(考えていることをまとめて上手く言葉にできない等)
 B頭部違和感 
 C離人症(自分の意志で行っている確かな実感が薄れる症状)  など

 次回は、8/6(水)に当院にて開催予定です。


第5回・てんかん事例検討会開催(08.04.23)

 恒例となりました「てんかん症例検討会」が今月も当院で開催されました。今回も愛知医科大学より兼本先生を始め、多くの皆様にご参加いただきました。全8事例について兼本先生、福智院長を中心に、多くの参加者で検討がなされました。簡単ではありますが、いくつか内容をご紹介します。

@薬剤性のてんかん発作が疑われ、統合失調症を併せ持つ患者さんの診断について

 ⇒ 性格傾向や発作の詳しい様子を確認し、統合失調症とてんかんのどちらがベースとなっているのかを検討しました。病歴を聞く際の注意点や発作内容の確認の仕方を改めて学ぶ内容となりました。

Aてんかんの診断もつけにくく、治療契約も結びにくい患者さんの対応について

 ⇒ てんかんの有無以上に取り組むべき問題が指摘されました。本人さんの人生にとっては、てんかん治療をすることが最優先課題とは言えないのではないかとの意見が交わされました。発作を止めることだけがてんかん治療ではないことを再認識する内容となりました。

B発作が止まらず、外科への紹介が考えられる患者さんへの対応について。何歳で、外来手術を促がすのが良いのか?

 ⇒ 本人さんの年齢を考えても、十分に自分の人生を決めるだけの判断力は有していると思われ、タイミングとしては最適と判断されました。また、専門家としては、手術のリスクを十分に説明した上で進めなくてはいけないが、その人の人生を決めるだけの決定的な証拠といえるものはなく、医師がパターナリズムに基づき何処まで判断すべきなにかを考えさせられる内容でした。

Cてんかん発作か過呼吸発作かで診断が悩まれる患者さんについて

 ⇒ 発作の内容を確認し、5分以上の長い発作が見られるのか? 夜間に発作が限定されるのか? 睡眠中の発作時には目は開いているのか?などと丁寧に見ていきました。その結果、てんかんも考えられるが睡眠時無呼吸症候群の治療を最優先にすべきなのではないかと判断されました。

D定年が迫っているてんかんが疑われる患者さんの今後の対応について

 ⇒ 本人さんも今は、発作を止めておくことを最優先に希望されているため、定年までは現状に大きな変化は与えないほうが良いのではないかと判断されました。しかし、処方内容を確認する中で、抗うつ剤がてんかん発作を引き起こしている可能性も十分に考えられることが指摘されました。

Eてんかんと同時に発達障害、人格障害が疑われる患者さんの診断にて

 ⇒ 発作内容を丁寧に確認したり、脳波所見を確認する中で、補足運動野の部分発作の可能性が高いと考えられました。また、兼本先生より「セーフティネットを張らずに一方的にてんかんの診断を奪ってはいけない。発作が無いということが、患者さんにとって不利益となってはならない。」とのご意見を頂きました。

 最後に、患者さんの状況に応じて対応方法を変える必要があることも、ご指導いただきました。

 
@IQが60以下の患者さん
 → 環境調整が最優先課題

AIQが普通でてんかん発作と心因性の発作が見られる患者さん
 → 心因性の発作と分けて、てんかん治療を最優先課題に

BIQが高くてんかん発作はないが、心因性の発作が見られる患者さん
 → 精神分析的な療法が望まれる

 今回も検討内容は多岐に渡り、非常に興味深い内容となりました。兼本先生にはご多忙の中、長時間にわたりご指導をいただき、職員一同大変貴重な経験となりました。ありがとうございました。

 次回の開催は、5月に愛知医科大学にて行われる予定です。


■第4回・てんかん事例検討会開催(08.03.27)

 2008年3月27日(木)、愛知医科大学にて第4回・てんかん事例検討会が愛知医科大学の先生方と共に行われました。

 愛知医科大学・福智クリニックからの事例を扱い、病歴・脳波所見をもとに、診療の進め方に対する様々な意見が交換されました。

 今回検討された内容を紹介します。

[ 事例1 ]

 検査上、異常所見は認められず、服薬に対して被害的な患者
  →EEGを繰り返し行なうことで、発作が認められた
   患者の治療者への陰性感情に流されないようにした
  →不確かな情報の中から、確かな情報を見つけていくことが大切ではないか

[ 事例2 ]

 心因性の発作を繰り返す患者の症例報告
  →デイケア通所の中で、患者の言動に大きな変化が見られ、発作消失
   診察・デイケアの果たした役割について再検討

[ 事例3 ]

 薬剤調整の困難な患者の症例報告
  →現在の発作を再確認し、薬剤調整を再検討
   変更する際の注意点や発作に伴う患者の不安について検討

 次回の開催は、4月に福智クリニックにて行われる予定です。


■第3回・てんかん事例検討会開催(08.02.27)

 2008年2月20日(水)、福智クリニックにて第3回・てんかん事例検討会が愛知医科大学の先生方と共に行われました。

 今回は当クリニックの2人の先生方から、計8つの事例が発表されるという非常にボリュームのある、内容の濃い検討会となりました。

 各先生方からあがった御意見を御紹介します。

・症状からの病名判断が困難な場合
 → 投薬を単剤へとするのはリスクが高いのでは

・「車を運転したい」「出産したい」
 → 危険性をきちんと説明した上で、本人の意志を尊重することが重要では

・周りの人に、自分がてんかんだということを知られたくない
 → 周りの人との関係性次第で、自分への態度は変わってくるもの

・どのてんかんの症状に当てはまらない
 → 枠に当てはまらないからといって、てんかんの可能性がゼロとは言えないのでは

・学生の患者さんが、リスクの高い減薬に取り組むには?
 → 長い夏休み等を利用するなど、本人の生活に支障をきたさないようにしては

・他科の医師は、抗てんかん薬の知識を持っていないことが多い
 → 例)内科疾患の原因を、根拠のない抗てんかん薬のせいにされてしまうことも
 → 他機関との連携の難しさ


 診断困難な事例が主だったこともあり、長時間に渡って熱心な検討が続きました。

   次回の開催は、3月27日(木)に愛知医科大学にて行われる予定です。


■第2回・てんかん事例検討会開催(08.01.20)

 2008年1月17日(木)、愛知医科大学にて第2回・てんかん事例検討会が愛知医科大学の方々と行われました。 前回と同じく、愛知医科大学からは、兼本先生をはじめ医師・薬剤師・検査技師の皆さんに御参加いただきました。

 愛知医科大学・当クリニックから、6つの事例が発表され、病歴・脳波所見をもとに、診療の進め方に対する様々な意見が交換されました。
 また、兼本先生による、基礎的な脳波の読み取り方についての詳しい説明もあり、初心者にも分かりやすい形で進められました。
 どの先生も、症状ではなくその人の人生や目標を優先して治療に当たることの重要性について、訴えておられたのが印象的でした。

 今後のてんかん医療に生かされる大変有意義な時間となりました。

 次回の開催は、2月20日(水)に福智クリニックにて行われる予定です。


■第1回・てんかん事例検討会開催(07.12.15)

 2007年12月5日、当クリニックにて第1回・てんかん事例検討会が愛知医科大学の皆さんと合同で行われました。 愛知医科大学からは、兼本先生をはじめ医師・薬剤師・検査技師の皆さん十数名にご参加いただきました。

 愛知医科大学・当クリニック双方から発表された事例をもとに、薬剤処方について、薬剤調整上の注意点、発作の見分け方、発作時の患者さんの主観的体験、発作を観察するポイントについて、など様々な角度からの検討がされました。
 今後のてんかん医療に生かされる大変有意義な時間となりました。
 今後は、開催場所を当クリニック、愛知医科大学とで毎月交代をして行います。

 次回の開催ですが、愛知医科大学にて来年1月を予定しています。