2020年12月21日

レンボレキサント勉強会に参加しました。

令和2年12月15日、福智クリニック医局にて不眠症治療薬レンボレキサントの勉強会を行いました。

レンボレキサントはオレキシン受容体拮抗薬(脳内の覚醒ホルモンであるオレキシン作用を抑えて、眠気をもたらす薬)であり、2種類のオレキシン受容体を阻害することによって覚醒を抑え、正常な睡眠を促す効果が期待されています。就寝前に服用するお薬で、2.5mg、5mg、10mgの錠剤があるため、不眠の程度によってお薬の量も調整しやすいそうです。

今回の勉強会では、55歳以上の不眠症患者さんを対象として、レンボレキサントを1ヶ月間服用した後の、睡眠状態の調査についてご紹介いただきました。

これによると、終夜睡眠ポリグラフ検査(睡眠時の体の状態を調べる検査で、しっかり眠ることができているか客観的に評価するもの)・調査対象者の主観的評価(しっかり眠れた感じがあるかどうかなどの対象者個人の感想)ともに、睡眠に改善がみられたとのことです。

寝つきが良く安定性があり、筋弛緩作用がないため、睡眠時無呼吸症候群の方にも使いやすいお薬となっています。

不眠症治療薬、睡眠導入剤には様々な種類があり、「眠れない」と言っても、寝付けないのか夜間に途中で起きてしまうのか朝早く目が覚めてしまうのかなど様々です。状態によって適したお薬は異なってくるかと思います。

不眠でお困りの方は、どのように眠れないのかについても診察でご相談下さい。

2020年12月 8日

パリペリドンLAIの勉強会に参加しました

令和2年11月25日、12月7日、福智クリニックにてパリペリドンLAIの勉強会に参加しました。

LAIとは持続性抗精神病注射薬剤で、主に統合失調症の患者さんに使われるお薬です。お薬にはいくつかの種類があり、投与間隔は2週間に1回、4週間に1回など様々です。

LAIは経口薬と比べ、薬の飲み忘れやそれによる症状の悪化を防ぐことができることが主なメリットだと考えられます。しかし現状としては、日本でのLAIの導入率は約8%であり、他の先進国と比べ低いそうです。注射を打つこと(痛み)への不安や費用の問題もあるのかもしれません。

この度、パリペリドンのLAIの1つである「ゼプリオンTRI」が発売されました。このLAIは、投与間隔が12週間に1回(約1シーズンに1回)という特徴があります。これまでパリペリドンのLAIを使っていた患者さんであれば、4週間⇒12週間に1回となり心理的・経済的な負担を軽減できるといったメリットがあります。

しかし、他の抗精神病薬を併用できない(単剤での治療の患者様のみ)などのデメリットもあるため、実際にこのLAIが適応となる患者さんは限られてしまいます。とは言え、治療の選択肢が増えることはとても良いことだと思います。

アドヒアランス(患者さんが治療方針の決定に賛同し、その決定に従って積極的に治療を受けること)が不良となってしまうと、「リカバリーが遅くなる」「ご家族の負担が大きくなる」「発病前の状態に戻りづらくなる」「職業的・社会的な困難が生じる」などの問題が起こりやすくなってしまいます。そうならないよう、患者さん自身がどういった治療を望まれているのか、診察でお話していただければと思います。

その方の病状やライフスタイルによって、どのお薬が適しているのか、どういった剤形(錠剤・散剤・液剤・貼付剤・注射剤など)が合っているのかは異なります。また、お薬によってかかってくる費用も異なります。ご質問などございましたら、いつでも診察でご相談下さい。

病状の安定や社会復帰に向け、デイナイトケアに興味のある方がいらっしゃいましたら、見学していただくことも可能です。これについても診察にてご相談下さい。

2020年12月 7日

第41回 名古屋サイコソーシャルリハビリテーション研究会に参加しました

令和2年11月28日、名古屋ルーセントタワーにて『第41回名古屋サイコソーシャルリハビリテーション研究会』が開催されました。

【一般講演】愛知医科大学 精神科学講座 藤田貢平先生「統合失調症治療におけるアセナピンの位置付け」
症例をもとに、アセナピン舌下錠について講演していただきました。

一般的な経口の内服薬は、胃⇒小腸⇒毛細血管へと吸収されていきます。しかし、このお薬は、舌の下に薬を置いておくことで、舌下粘膜⇒毛細血管へと吸収されていきます。そのため、便秘などの胃腸症状が起きにくいそうです。服用の仕方にはコツが必要ですが、興味のある方は診察でご相談いただければと思います。

【特別講演】 名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野 教授 明智龍男先生「重篤な身体疾患を抱えた患者さん、ご家族の精神的ケアがん患者・家族との支持的な関わりを中心に」
明智先生は現在、サイコオンコロジー(精神腫瘍学)を専門にされており、がん患者さんやそのご家族に対する精神的ケアについて講演していただきました。

がんの患者さんと一言で言っても、痛みや不安の感じ方はそれぞれ異なります。それぞれの患者さん、ご家族に合ったかかわり方を柔軟に考えていくことが、治療者にとって大切なことであると学びました。

また、その患者さんが、どんな人柄でどんな生活をされてきたのか、がんという病気をどう体験されているかを知り、患者さんやご家族のありのままを受け入れていくことが大切だということもお話ししていただきました。これは、精神科治療にも通ずるものであると思いますので、「病気だけでなくその人をみること」を私たちも心がけていきたいと思います。

最後に、明智先生の「どんな状態になっても、普通にそばにいること。最後まで同じ距離感でいることが大切。」という言葉に感銘を受けました。ずっと忘れずにいたい言葉だと思いました。